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[図形を動かして学ぶ]複素数平面上の点の軌跡

数学Ⅲ「複素数平面」の内容を含んだ奇跡の問題って、どのように解いていけばよいか悩むところです。デモも使いながら、複数の解法を確認してみましょう。

複素数平面上の点 $z$ が、中心 $1+2i$ , 半径 $1$ の円上を動くとき、$w=2iz-4i+5$ を満たす点 $w$ の軌跡を求めよ。

この問題は大きく分けると以下の3通りの解法が考えられます。

  1. 式変形による解法
  2. 通常の $xy$ 平面上で考える解法
  3. 式から図形的に考える解法

今回は3の解法をデモ画面で紹介します。1と2の解法もその後に掲載します。

図形的に考える解法

(アニメーションの速度)
やや遅
点 $z$ を表示する
点 $2iz$ を表示する
点 $w$ を表示する


複素数 $a+bi$ ($a, b$ は実数)は座標平面上で点 $(a, b)$ を表すので、点 $z$ が動く図形は座標平面では $(1,2)$ を中心とする半径 $1$ の円(デモでは黒い円で表示)を表します。

一方、$2i = \textcolor{blue}{2}(\cos \textcolor{orange}{\frac{\pi}{2}} + i \sin \textcolor{orange}{\frac{\pi}{2}})$ と表せます。

そのため、点 $2iz$ は点 $z$ を、

原点を中心に反時計回りに $\textcolor{orange}{\frac{\pi}{2}}$ だけ回転し、さらに原点からの距離を $\textcolor{blue}{2}$ 倍 $\cdots ①$

にした点であることがわかります。

【点の回転移動】
点 $z$ に対し、点 $r(\cos\theta + i \sin\theta)z$ は、
点 $z$ を原点を中心に反時計回りに $\theta$ だけ回転し、さらに原点を中心に $r$ 倍に拡大(縮小)した点

上のデモで「点 $z$ を表示する」「点 $2iz$ を表示する」の2つにチェックを入れて「動かす」ボタンを押してみてください。

点 $z$ (黒点)と点 $2iz$ (青点)が常に①を満たしながら動いているのが分かるでしょうか。

このことから、黒い円と青い円も①を満たした関係になっています。

円がどのように移っているかは、以下のように考えれば分かるでしょう。

  • 黒い円の中心 $(1, 2)$ を原点を中心に $\frac{\pi}{2}$ 回転すると$(-2, 1)$ に移り、さらに原点からの距離を $2$ 倍にすると点 $(-4, 2)$ に移る(複素数を用いて $(1+2i) \times 2i$ を計算して導いてもよい)。
  • 回転移動のあと、原点を中心に $2$ 倍に拡大するので、青い円の半径も黒い円の半径の $2$ 倍になる。

さらに、点 $w=2iz-4i+5$ は点 $2iz$ を

$5-4i$ ( $x$ 軸方向に $5$、$y$ 軸方向に $-4$ )だけ平行移動 $\cdots ②$

した点です。

上のデモで「点 $2iz$ を表示する」「点 $w$ を表示する」の2つにチェックを入れて「動かす」ボタンを押してみてください。

すると、点 $2iz$ を表す青点と点 $w$ を表す赤点が連動して動いているのが分かると思います。

これらの点を結んだ緑の破線は大きさと向きが一定のままですね。

青点と赤点は②を満たしながら動いているということになります。

そして、青い円と赤い円も②を満たしています。すなわち、

  • 青い円の中心 $(-4, 2)$ は $(1, -2)$ に移る(複素数を用いて$(-4+2i)+(5-4i)$を考えてもよい)
  • 平行移動なので半径は青い円と変わらない

以上のことを考えれば、特に計算をしなくても点 $w$ の描く図形は

中心 $1-2i$、半径 $2$ の円

と答えることができます。

式変形による解法

式変形により点 $w$ の描く図形を求める方法を説明します。教科書ではこの方法で解説されていることがほとんどです。

ここでは以下の性質を利用します。

【複素数平面における円の方程式】
点 $z$ が中心 $\alpha$、半径 $r$ の円上を動くとき、 $$ |z-\alpha| = r$$ が成り立つ。
【複素数の絶対値の性質】
$$\begin{align} |\alpha \beta| &= |\alpha| \ |\beta| \\ \left| \frac{\alpha}{\beta} \right| &= \frac{|\alpha|}{|\beta|} \end{align}$$

点 $z$ は中心 $1+2i$ , 半径 $1$ の円上を動くので

$$|z-(1+2i)| = 1 \ \ \cdots ③$$

が成り立ちます。一方、$w=2iz-4i+5$ より

$z = \frac{w-5+4i}{2i}$が成り立つので、これを③に代入すると

$$\left| \frac{w-5+4i}{2i} – (1+2i) \right| = 1$$

絶対値の中身を通分して

$$\left| \frac{w-(1-2i)}{2i} \right| = 1$$

$$\frac{|w-(1-2i)|}{|2i|} = 1$$

$|2i|=2$なので

$$\frac{|w-(1-2i)|}{2} = 1$$

$$\therefore \ \ |w-(1-2i)| = 2$$

よって点 $w$ の描く図形は、中心 $1-2i$、半径 $2$ の円となります。

$xy$ 平面上で考える解法

ここでは、複素数平面上での軌跡の問題を通常の $xy$ 平面の問題に置き換えて考えてみることにします。

$z=s+ti, w=x+yi$ ($s$、$t$、$x$、$y$ は実数)とおき、複素数平面上で $z, w$ を表す点をそれぞれP, Qとおきます。

「点 $z$ が、中心 $1+2i$ , 半径 $1$ の円上を動く」とは、$xy$ 平面上では

「点Pが、中心 $(1, 2)$, 半径 $1$ の円上を動く」ということになるので、

$$(s-1)^2+(t-2)^2=1 \ \ \cdots ④$$

が成り立ちます。

また、$w=2iz-4i+5$ であることから

$$x+yi = 2i(s+ti) -4i+5$$

$$ \therefore \ \ x+yi = (5 – 2t) + (2s-4)i $$

$x, y, s, t$ は実数なので

$$\begin{cases} x = 5 – 2t \\ y = 2s -4 \end{cases}$$

$$\therefore \ \ \begin{cases} s = \frac{y+4}{2} \\ t = – \frac{x -5}{2} \end{cases}$$

これらを④に代入して

$$\left( \frac{y+4}{2} – 1 \right) ^2 + \left( – \frac{x -5}{2} – 2 \right) ^2 = 1$$

$$\left( \frac{y+2}{2} \right) ^2 + \left( – \frac{x – 1}{2} \right) ^2 = 1$$

$$\frac{(y+2)^2}{4} + \frac{(x-1)^2}{4} = 1$$

$$\therefore \ \ (x-1)^2 + (y+2)^2 = 4$$

よって $xy$ 平面上で点Qは、中心 $(1, -2)$、半径 $2$ の円上を動くので、

複素数平面上において点 $w$ の描く図形は、中心 $1-2i$、半径 $2$ の円となります。

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