tangentの三角方程式・不等式、自信を持って解けますか?
$(1) \tan \theta = 1$
$(2) \tan \theta ≧ – \frac{1}{\sqrt{3}}$
$(3) \tan (\frac{\theta}{2} + 30^\circ) < \sqrt{3}$
前回に引き続き、今回は、三角方程式・不等式の基本形 ~ $\tan$ バージョン~ を扱います。
(注)この記事では、デモとの整合性を取るために全て度数法で表記しています。実際の問題では弧度法で問われることが多いので、その場合は弧度法で解答するようにしましょう。
今回は、$\tan$ の三角方程式・不等式を単位円を用いて考えるためのデモを以下に用意しました。
(アニメーションの速度) (式と角の範囲の設定)$\tan \theta$ ( $° ≦ \theta ≦ $ $°$ )
軌跡を表示する
上のデモを動かしてみましょう。プルダウンの数値などは何も変更せず、「動かす」ボタンを押してみてください。
すると、黒い点が円の右端から反時計回りにぐるっと一回転し始めます。
また、原点と動点を通る直線も表示され、動点の動きに伴ってこの直線も傾きが変化しています。
(以降、この傾きが変化する直線に $l$ と名前をつけることにします。)
※円の右端に $y$ 軸と平行な直線が引かれていますが、これは直線 $x=1$ を表しています。$l$ と直線 $x=1$ が交わる部分も黒い点で表示されるようにしてあります。
動く黒い点をじっくり見てみると、途中で2回色が赤くなったことに気がつきましたか?(もしわからなければ、「アニメーションの速度」を「遅」にチェックしてから「リセット」ボタンを押し、もう一度「動かす」を押して再度確認してみてください。)
今動かしてもらったのは、冒頭の問題の $(1)$ を視覚的に捉えるためのデモ画面です。
(1)の解法
$\tan$ は 原点と単位円上の点を通る直線の傾きです。なので、この問題は言い換えると
単位円上で $l$ の傾きが $1$ となる角はどこ?$0^\circ ≦ \theta < 360^\circ$ の範囲で答えよ。
ということになります。
$0^\circ ≦ \theta < 360^\circ$ なので、単位円上の点が $(1, 0)$ からスタートして反時計回りに一周して再び$(1, 0)$ に戻ってくる間に、$l$ の傾きが $1$ となる点の回転角を答えればよいというわけです。
デモではそれがわかりやすいように条件を満たしたときに点が赤くなるようにしています。
原点を通り傾き $m$ の直線は点 $(1, m)$ を通るので、今回の場合 $l$ が点 $(1, 1)$ を通れば良いことになり、そのときに動点(および $l$ と直線 $x=1$ の交点)が赤くなるのが観察できます。
点が赤くなるのは $45^\circ , 225^\circ$ のとき。というわけで、$(1)$ の解は $\theta = 45^\circ , 225^\circ$ となります。
(2)の解法
次は不等式です。この問題は
単位円上で $l$ の傾きが $-\frac{1}{\sqrt{3}}$ 以上になる角はどこ?$0^\circ ≦ \theta < 360^\circ$ の範囲で答えよ。
になります。
では先程のデモ画面で確かめてみましょう。
(式と角の範囲の設定)のあとのプルダウン5つを、左から順に
“≧”, “-1/√3”, “0”, “360”
を選択し、「リセット」を押してから「動かす」を押してください。
もしくは、以下のリンクをクリックするとデモ画面にスクロールされてプルダウンの選択肢が自動的に変更されるので、「動かす」を押すだけで見ることができます。
デモへ移動デモを観察すると、
$l$ と直線 $x=1$ との交点が、点 $(1, -\frac{1}{\sqrt{3}})$ と一致、あるいはそれより上にある
ときに動点が赤くなることに気づきますか?
このとき傾きは $-\frac{1}{\sqrt{3}}$ より大きくなるからです。
わかりにくければスピードを遅くしたり、アニメーションを止めたり逆再生したりしながらゆっくり観察してみてください。
さて、動点が赤くなるのは $0^\circ$ から $90^\circ$ までと、$150^\circ$ から $270^\circ$ まで、そして $330^\circ$ から $360^\circ$ までの間です。
というわけで、 $(2)$ の解は $0^\circ ≦ \theta < 90^\circ$ , $150^\circ ≦ \theta < 270^\circ$ , $330^\circ ≦ \theta < 360^\circ$となります。
(注) 不等号に等号を含める、含めないがややこしいので確認です。
- $\tan 0^\circ = 0 > -\frac{1}{\sqrt{3}}$ なので、$0^\circ$ は含めます(デモでもスタートから点は赤いですね)。
- $\tan 150^\circ$ , $\tan 330^\circ$ の値はいずれも $-\frac{1}{\sqrt{3}}$で、問題は $ \tan \theta ≧ – \frac{1}{\sqrt{3}}$ とイコールがついているのでこれらの角は含めます。
- $90^\circ$ , $270^\circ$ は含めてはいけません。これらの角の $\tan$ は定義されないからです。
- $360^\circ$ は問題文で $\theta$ の範囲にそもそも含まれていないので、解答でも含めません。
(3)の解法
次は、角が $\theta$ ではなく $\frac{\theta}{2} + 30^\circ$ となっています。
この場合は、$t = \frac{\theta}{2} + 30^\circ$ と置き換えてみましょう。
$0^\circ ≦ \theta < 360^\circ$ より、
$0^\circ ≦ \frac{\theta}{2} < 180^\circ$
よって
$30^\circ ≦ \frac{\theta}{2} + 30^\circ < 210^\circ$
すなわち $30^\circ ≦ t < 210^\circ$ となるので、この問題はまず
$\tan t < \sqrt{3} \ \ \ (30^\circ ≦ t < 210^\circ) \ \ \ \cdots (*)$
を解くことが目標になります。
この式の意味は、
単位円上で $l$ の傾きが $\sqrt{3}$ より小さくなる角はどこ?$30^\circ ≦ t < 210^\circ$ の範囲で答えよ。
です。
では、上のデモを使ってこの不等式を解いてみましょう。
(式と角の範囲の設定)のあとのプルダウン5つを、左から順に
“<“, “√3”, “30”, “210”
としてから、「リセット」→「動かす」と押してください。
もしくは、以下のリンクをクリックするとデモ画面にスクロールされてプルダウンの選択肢が自動的に変更されるので、「動かす」を押すだけで見ることができます。
デモへ移動今回は $30^\circ ≦ t < 210^\circ$ で考えるので、動点は $30^\circ$ の位置からスタートします。
$(2)$ と同様、
$l$ と直線 $x=1$ との交点が、点 $(1, \sqrt{3})$ より下にある
ときに動点が赤くなることに気づければOKです。
動く点が赤くなるのは $30^\circ$ から $60^\circ$ と、$90^\circ$ から $210^\circ$まで。
よって$(*)$の解は $30^\circ ≦ t < 60^\circ$ , $90^\circ < t < 210^\circ$ となります。
(ここでも $<$ なのか $≦$ なのかに気をつけてください。$30^\circ$ は含みます。)
$\theta$ の範囲に直しましょう。$t = \frac{\theta}{2} + 30^\circ$ だったので、
$30^\circ ≦ \frac{\theta}{2} + 30^\circ < 60^\circ$ , $90^\circ < \frac{\theta}{2} + 30^\circ < 210^\circ$
辺々 $30^\circ$ を引いて、
$0^\circ ≦ \frac{\theta}{2} < 30^\circ$ , $60^\circ < \frac{\theta}{2} < 180^\circ$
辺々 $2$ 倍して、$(3)$ の解は
$0^\circ ≦ \theta < 60^\circ$ , $120^\circ < \theta < 360^\circ$
となります。
まとめ
今回は三角方程式・不等式の考え方の $\tan$ バージョンをデモとともに見てもらいました。
$\sin$ や $\cos$ に比べて$\tan$ の三角不等式は考え方が難しいと思いますが、
今回のデモを何度も繰り返し見ることで頭でイメージできるようになります。それまで色々な問題で試してみてください。
デモは式と角の範囲をいろいろと設定できるので、自由に設定して試してみてください。
(問題の解答) 後ろの()は弧度法で答える場合
$(1) \theta = 45^\circ , 225^\circ$ $(\theta = \frac{\pi}{4} , \frac{5}{4}\pi)$
$(2) 0^\circ ≦ \theta < 90^\circ$ , $150^\circ ≦ \theta < 270^\circ$ , $330^\circ ≦ \theta < 360^\circ$ $(0 ≦ \theta < \frac{\pi}{2}$ , $\frac{5}{6}\pi ≦ \theta < \frac{3}{2}\pi$ , $\frac{11}{6}\pi ≦ \theta < 2\pi)$
$(3) 0^\circ ≦ \theta < 60^\circ$ , $120^\circ < \theta < 360^\circ$ $(0 ≦ \theta < \frac{\pi}{3}$ , $\frac{2}{3}\pi < \theta < 2\pi)$
Comments are closed.