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[図形を動かして学ぶ]3次関数に引ける接線の本数

「ある点から3次関数の曲線に何本接線が引けるでしょう」という問題です。苦手な人が多いけど大事な問題ですよ。

$a$ を定数とする。曲線 $y=x^3-5x$ に点 $(1, a)$ から引ける接線の本数を求めよ。

この問題を解く手順は以下の通りです。

  1. 接点の $x$ 座標を $t$ とおき、曲線上の点 $(t, t^3 – 5t)$ における接線の方程式を求める。
  2. この接線が $(1, a)$ を通ることから、$a$と $t$ の関係式を導く。
  3. 2で求めた関係式を $t$ に関する方程式とみて、$a$ の値によって実数解の個数がいくつになるかを調べる。実数解の個数がそのまま接線の本数となる。

手順1

接点の $x$ 座標を $t$ とおくと、$y=x^3-5x$ について $y’ = 3x^2-5$ なので、接線の方程式は

$y-(t^3-5t)=(3t^2-5)(x-t)$

すなわち

$y=(3t^2-5)x-2t^3 \cdots ①$

となります。

手順2

①が点 $(1, a)$ を通るので、①に $(x, y)=(1, a)$ を代入して

$a=-2t^3+3t^2-5 \cdots ②$

という関係式が導けます

手順3

②を $t$ に関しての3次方程式とみて、$t$ の実数解の個数を求めます。

これは定数 $a$ の値によって変わるので、

直線 $y=a$ と曲線 $y=-2t^3+3t^2-5$ の共有点の個数を考える

という方針でいきましょう。

$y=-2t^3+3t^2-5$ について $y’=-6t^2+6t=-6t(t-1)$ より

$y’=0$ のとき $t=0, 1$

なので、関数 $y=-2t^3+3t^2-5$ の増減表は以下のとおりになります。

$t$$\cdots$$0$$\cdots$$1$$\cdots$
$y’$$-$$0$$+$$0$$-$
$y$$\searrow$$-5$$\nearrow$$-4$$\searrow$

下の図に直線 $y=a$ と曲線 $y=-2t^3+3t^2-5$ が両方表示されるようにしてあります。

スライダーを動かすと $a$ の値が変化し、それに応じて直線も上下に移動します。

また、直線と曲線の交点が赤丸で示されます。

aの値:


図を見てわかるとおり、$t$ についての方程式②の実数解の個数は、

$\begin{cases} a < -5, -4 < a & \sf{のとき} \ \rm{1} \ \sf{個} \\ a = -5, -4 & \sf{のとき} \ \rm{2} \ \sf{個} \\ -5 < a < -4 & \sf{のとき} \ \rm{3} \ \sf{個} \end{cases}$

ということになります。

そして、本問においてはこの実数解の個数が接点の個数であり、接線の本数になります。

よって、

(答) $\begin{cases} a < -5, -4 < a & \sf{のとき} \ \rm{1} \ \sf{本} \\ a = -5, -4 & \sf{のとき} \ \rm{2} \ \sf{本} \\ -5 < a < -4 & \sf{のとき} \ \rm{3} \ \sf{本} \end{cases}$

もう少し細かい話

では、なぜ(実数解の個数)=(接点の個数)=(接線の本数)になるのか。

方程式②の実数解は、曲線 $y=x^3-5x$ に点 $(1, a)$ から引いた接線における接点の $x$ 座標です($t$ は元々接点の $x$ 座標を文字でおいたもの)。

例えば、$a=0$ の時の方程式②の実数解は $t=-1$ であり、

曲線 $y=x^3-5x$ に点 $(1, 0)$ から引いた接線は点 $(-1, 4)$ で接します。

なので、(方程式②の実数解の個数)=(接点の個数)ということが分かります。

そして、3次関数のグラフでは接点が異なれば接線も異なるので、(接点の個数)=(接線の本数)が言えます。

「接点が異なれば接線も異なる」というのは、どういうことでしょうか?

問題集などを見ても当たり前のように書いてあるのですが、このことも図を動かして確かめてみましょう。

下に3次関数 $y=x^3-5x$ のグラフと、接線が描いてあります。

スライダーを動かすと接点の $x$ 座標を変化させることができ、それに伴い接線も変化します。

実際に動かしてみて、どの接線も同じ直線になることはないことを確かめてください。

(つまり、どの接線も2箇所以上の接点を持たないことが分かればOKです。)

接点のx座標:


さて、3次関数では接点が異なれば接線も異なることが分かりましたが、4次関数の場合はどうでしょうか。実は、4次関数の場合は接点が異なっていても接線が一致してしまうケースがあります。

先ほどの3次関数と同様に、動かして確かめてみましょう。

下の図は、4次関数 $y=x^4-2x^3-3x^2-4$ のグラフと、接線が描いてあります。

スライダーを動かすと接点の $x$ 座標を変化させることができ、それに伴い接線も変化します。

実際に動かしてみると・・・ちょっと先ほどの3次関数とはワケが違うことに気付きますか?

接点のx座標:


スライダーを動かしていると、$x=-1$ のときと $x=2$ のときの接線が一致する、すなわちこれらの時の接線は異なる2点で接することに気づいたでしょうか。(それがわかるようにスライダーの値とは違うところの接点を赤で示すようにしてあります)

このように、4次以上の関数では「接点が異なれば接線も異なる」は成り立たず、1本の接線が異なる2点で接する場合もあります。このことは、数学Ⅱとして以下のような形で出題されることがあります。

  • 4次関数 $y=x^4-2x^3-3x^2-4$ のグラフと異なる2点で接する直線の方程式を求めよ。

(余裕のある人は解いてみましょう。答えは $y=-4x-8$です。)

冒頭の問題は3次関数だったので、(実数解の個数) =(接点の個数)=(接線の本数)として良かったんですね。

最後に

冒頭の問題について、$a$ が変化するとどのように接線が引けるかのデモも下に用意しました。

スライダーで $a$ の値が変化させることができます。

確かに、$-5 < a -4$ の範囲では接線が3本引けていることが分かると思います。

自力で問題を解くときも、自分である程度下のような図をかいて接線を引いてみることで、解答の確認作業に使うことができます。下のデモの図はイメージできるようにしておくといいでしょう。

aの値:


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